STAR面接は行動面接とも呼ばれ、候補者の実力や適性を見極めて採用ミスマッチを防ぐ効果的な手法として注目されています。GoogleやAmazonなどの世界的企業が導入していることから、その有効性に関心を持つ企業が増えてきました。
そこで本記事では、STAR面接の概要や導入メリット、実践に役立つ質問例を詳しく解説します。
自社の採用活動に取り入れて、面接の精度を高めたい方はぜひ参考にしてみてください。
この記事の内容
STAR面接とは求職者の「過去の行動」に対して質問する面接手法
STAR面接とは、求職者の「過去の行動」に焦点を当て、その人の特性や能力を具体的に見極める面接手法です。
この手法では、以下4つの要素を順に掘り下げ、候補者の行動プロセスや考え方を深く理解します。
Situation(状況) | 候補者が行動を起こした背景 |
---|---|
Task(課題) | 解決すべき課題や直面した問題 |
Action(行動) | 課題解決のために実際に取った行動 |
Result(結果) | 行動の成果や学び |
たとえば「プロジェクトの遅延を解消した経験」を聞く場合、遅延の背景(状況)、原因(課題)、具体的な対策(行動)、その結果と学び(結果)を質問項目に盛り込みます。
このような質問は、候補者がどのように状況を捉え、意思決定したか具体的に把握でき、価値観や問題解決能力を見極められます。
採用ミスマッチの防止に役立つことから、多くの企業から注目を集めてきました。
STAR面接における4つのフレームワークと質問例
具体的に、STAR面接における4つのフレームワークと質問例を紹介します。
- 状況質問(S)
- 課題質問(T)
- 行動質問(A)
- 結果質問(R)
状況質問(S)
状況質問では、候補者が過去に経験したシチュエーションについて詳しく掘り下げます。
この段階では、行動や成果を理解するための前提として、当時の環境や役割を細かく質問してください。
以下は、状況質問の例です。
- あなたが担当したプロジェクトの概要を教えてください
- 参加していたプロジェクトには何人関わっていましたか?
- あなたの役割と責任はどのようなものでしたか?
- その時、どのような課題や目標が設定されていましたか?
状況を確認していくと、候補者の環境や責任の範囲が明確になります。同じ行動でも状況によって評価が変わるため、丁寧に掘り下げてみてください。
課題質問(T)
ここでは、候補者がその状況の中で直面した課題を尋ねます。
どのような困難があったのかを確認していくと、候補者の課題認識力や取り組む姿勢を評価できるでしょう。
以下は、課題質問の例です。
- そのプロジェクトの中で最も大変だった課題は何でしたか?
- 課題解決のために、どんな準備が必要でしたか?
- 問題解決のために、どのような目標が設定されましたか?
- あなたが解決すべきだと考えた最も重要な課題は何でしたか?
このような質問例から、候補者の問題解決力の基礎が見えてくるでしょう。
行動質問(A)
行動質問は、候補者が課題解決のために行った、具体的なアクションを詳しく探ります。
この質問では、候補者の実行力や思考プロセスを確認します。行動の選択理由や実施の工夫がポイントになるでしょう。
以下は、質問例です。
- 課題を解決するために、あなたはどんな行動をしましたか?
- どのように優先順位を決めましたか?
- チームメンバーや他部署とどのように連携しましたか?
- その行動を選んだ理由や工夫した点を教えてください
候補者から得られた回答は、行動の裏にある意図や工夫が重要な評価材料になります。
結果質問(R)
結果に関する質問は、候補者の行動によって得られた成果や影響を尋ねます。
ここでは成果の具体性だけでなく、その結果を候補者がどのように受け止め、次にどう活かしたのかを確認してください。
質問の例としては、次のようなものがあります。
- あなたの行動がどのような成果を生み出しましたか?
- その成果は、チームやプロジェクト全体にどのような変化や影響を与えましたか?
- その経験を通じて得た学びや、改善すべき点があれば教えてください
結果を聞くだけでなく、その成果が候補者の成長にどのように結びついたのかまで尋ねましょう。候補者の自己成長力や振り返りの姿勢を評価できます。
STAR面接を取り入れる4つのメリット
STAR面接を取り入れるメリットは、主に以下の4つです。
- 行動ベースで求職者の内面スキルを把握できる
- 求職者の本質を見抜ける
- 一貫性のある面接が可能になる
- 採用ミスマッチの防止につながる
行動ベースで求職者の内面スキルを把握できる
STAR面接では、候補者の過去の行動に基づいて質問を進めるため、求職者がどのように考え、どのように行動してきたかを把握できます。
これにより、問題解決力やリーダーシップ力、チームでの協調性など、候補者の内面的なスキルや能力を深く理解する材料になるでしょう。
単なる自己PRや経歴の表面的な説明だけでは見えにくい、行動の裏にある本質が見える点が大きなメリットです。
求職者の本質を見抜ける
STAR面接では、応募者がどのような場面でどんな選択をし、その理由をどのように説明するかを詳しく聞けるため、本質を見抜く力が高まります。
たとえば、過去の困難な状況でどのように判断したかで、候補者の価値観や仕事への取り組み方、問題解決のスタイルが見えてきます。
また、結果についてどれだけ深く振り返り、自分の成長や学びに結びつけているかも、入社後の成長に欠かせません。
これにより、企業文化やチームの雰囲気との相性も判断しやすくなるでしょう。
一貫性のある面接が可能になる
STAR面接は、すべての候補者に対して同じ質問フレームワークを用いるため、複数の面接官による評価のばらつきを回避できます。
この仕組みにより、面接全体の公平性が保たれ、採用プロセスにおいて一貫性が高まります。
また、候補者の回答が具体的であるため、記録やフィードバックもしやすくなり、採用基準の透明性も向上するでしょう。
採用ミスマッチの防止につながる
STAR面接は、候補者の過去の具体的な行動に基づいて能力や特性を評価するため、採用後に「思っていた人材と違った」というミスマッチを防ぐ効果があります。
たとえば「問題解決能力がある」と自己PRする候補者に対して、課題に直面したエピソードを深く掘り下げれば、その能力が発揮されたかどうかを確認できます。
特に、即戦力となる人材を確保したい企業にとって、この面接手法は非常に有効といえるでしょう。
STAR面接で求職者の資質を見極める質問例
ここからは、面接で活用できる資質別の質問例を、フレームワークごとに紹介します。
- 主体性を確認する場合
- 協調性を確認する場合
- 分析力を確認する場合
- ストレス耐性を確認する場合
主体性を確認する場合
主体性を確認する質問では、求職者が自発的に課題を解決し、行動した経験を掘り下げます。そのため、仕事に対する積極的な姿勢や問題解決能力を見極める質問を用意しましょう。
以下に、質問例をまとめました。
状況質問 | 「あなたがリーダーシップを発揮した経験を教えてください」 「周囲の協力を得るのが難しい状況で、主体的に取り組んだ仕事について教えてください」 「あなたが提案から実現まで関わったプロジェクトについて教えてください」 |
---|---|
課題質問 | 「その状況で、最も難しかった課題は何でしたか?」 「課題を解決する際、他のメンバーが協力的ではなかった場合、どのように感じましたか?」 「自分の役割を全うする中で、何を最も重要視しましたか?」 |
行動質問 | 「課題を乗り越えるために、自分から提案したアイデアはありますか?」 「問題解決に向けて、どのようにはたらきかけましたか」 「周りのメンバーにどのようにサポートしましたか?」 |
結果質問 | 「あなたの行動によって、どのような成果が得られましたか?」 「その経験から学んだことを、次にどう活かしましたか?」 「自分の行動を振り返って、点数をつけると何点ですか」 |
候補者が実際に行動した具体例を引き出すため「どんな工夫をしたか」「その結果どうなったか」を細かく尋ねましょう。
協調性を確認する場合
協調性を確認する質問では、求職者のチーム内での役割や、他者との関わり方を深掘りします。
以下に、質問例をまとめました。
状況質問 | 「チームでの共同作業が求められる状況で、どのような役割を担いましたか?」 「メンバーと意見が対立したことはありますか?」 「大人数のプロジェクトに参加した際、どのような立ち位置で仕事をしましたか?」 |
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課題質問 | 「チーム内で発生した最も大きな課題は何でしたか?」 「意見の食い違いを解決する際、どのような困難がありましたか?」 「あなたがチームの中で取り組む必要があった問題は何ですか?」 |
行動質問 | 「メンバーの意見をまとめるために、どんな行動を取りましたか?」 「チーム全体が一つの目標に向かうために、あなたが心掛けたことは何ですか?」 「チームワークを改善するために提案したアイデアはありますか?」 |
結果質問 | 「目標達成に向けて、あなたはメンバーにどのような影響を与えましたか?」 「チームでの経験から学んだことを教えてください」 「チームワークを強化するために、今後の工夫を教えてください」 |
万が一、候補者の役割が明確でなかった場合、チームに貢献した具体的な行動を尋ねるとよいでしょう。
分析力を確認する場合
分析力を確認する質問では、求職者が問題をどのように把握し、解決に向けて何を考えたのかを評価します。論理的思考力やデータ活用力を見極めるのに役立つでしょう。
以下に、質問例をまとめました。
状況質問 | 「複雑な問題に直面した状況を教えてください」 「数字やデータを基に判断した経験はありますか?」 「あなたが担当したプロジェクトの目標はどのようなものでしたか?」 |
---|---|
課題質問 | 「解決すべき問題の原因を特定する際、何を最初に調べましたか?」 「プロジェクトで最も達成が難しかった課題を教えてください」 |
行動質問 | 「問題の原因を突き止めるために、どのようなデータを活用しましたか?」 「情報収集の際に特に重視したポイントは何ですか?」 「分析結果を元に、どのような行動を提案しましたか?」 |
結果質問 | 「あなたの分析結果が、プロジェクトにどのような影響を与えましたか?」 「分析プロセスのどこを改善すれば、さらに良い成果が得られたと思いますか?」 「同じ状況に直面したら、次はどのように分析を進めますか?」 |
分析力に関する質問では「その仮説を立てるまでのプロセス」を深掘りしてください。
ストレス耐性を確認する場合
ストレス耐性を確認する質問では、求職者が困難な状況に直面した際、どのように対応したか聞きます。こうした質問は、入社後の早期退職リスクを抑えるために有効でしょう。
以下に、質問例をまとめました。
状況質問 | 「締め切りが迫る中で、多くの業務を抱えた経験はありますか?」 「精神的に負担が大きかったプロジェクトについて教えてください」 「苦手な仕事に取り汲んだ経験はありますか?」 |
---|---|
課題質問 | 「ストレスが増した理由は何ですか?」 「プレッシャーを感じた課題に共通点はありますか?」 「周囲のサポートが不足していたとき、どう感じましたか?」 |
行動質問 | 「ストレスを感じたときに、どのように気持ちを切り替えましたか?」 「負担が大きい仕事をこなすために、どんな計画を立てましたか?」 「周囲に助けを求めるためにどのようにコミュニケーションをとりましたか?」 |
結果質問 | 「困難を乗り越えた経験から得た学びを教えてください」 「苦手な業務に取り組んだ結果、自身にどのような成長がありましたか?」 「今後、プレッシャーを感じた際、どんな工夫をして対応したいですか?」 |
ストレス耐性への質問は、候補者の経験によっては答えづらいものもあります。
ネガティブな言葉は繰り返さず「その経験から学んだこと」「今後どのように活かしたいか」など、前向きな質問を意識しましょう。
STAR面接を成功させる3つのコツ
STAR面接を成功させるコツは、以下の3つです。
- フレームワークに基づく質問を準備する
- 評価基準を明確にして一貫性を保つ
- 「事実」を深掘りする質問を意識する
フレームワークに基づく質問を準備する
STAR面接の効果を最大限引き出すには、4つのフレームワークを活用しながら、目的に応じた質問を準備しましょう。
単にフレームに沿うだけでなく、自社が評価したい資質やスキルに合わせて質問をカスタマイズするとスムーズです。
また、候補者のあらゆるバックグラウンドを想定して質問例を設定すると、より深い情報を引き出せるでしょう。
評価基準を明確にして一貫性を保つ
STAR面接では、候補者の回答が多岐にわたるため、評価基準が曖昧だと面接官ごとに判断がばらつく可能性があります。
評価の一貫性を維持するには、次のポイントを意識して基準を設定しましょう。
- 求める人物像を明確化する
- 各フレームに基づいた評価基準を設定する
- 5段階評価や具体的なスコアリング基準を設定し、共通の視点で評価する
このような具体的な指標があると、面接の方向性が統一され、評価基準のブレを回避できます。
「事実」を深掘りする質問を意識する
STAR面接では、事実を掘り下げる質問を意識しましょう。
ここで重要なのは、候補者の主観的な意見ではなく、客観的な行動や結果に焦点を当てることです。
具体的には、5W1H(When・Where・Who・What・Why・How)を意識し、質問に過不足がないよう考慮してください。
以下は、質問例です。
- 「その課題を発見したきっかけは何ですか?」 (When・Where・What)
- 「その行動を選んだ理由は?」 (Why)
- 「どのようなプロセスで問題を解決しましたか?」 (How)
事実に基づいて質問をすると、候補者が実際に何を考え、どう行動したかを把握できます。
STAR面接を導入する際の注意点
STAR面接を導入する際は、以下の3点に注意しましょう。
- 求職者に圧力がかからないよう言葉の選び方に注意する
- 曖昧な質問は避ける
- 他の面接手法も組み合わせる
求職者に圧力がかからないよう言葉の選び方に注意する
STAR面接では「なぜそう考えたのか?」「どう行動したか?」など、掘り下げた質問をしますが、場合によっては候補者に圧迫感を与える可能性があります。
このようなケースでは、候補者が緊張してしまい、本来の姿を引き出せません。圧力を感じさせないよう、言葉の選び方や態度には細心の注意を払ってください。
曖昧な質問は避ける
STAR面接でよくある失敗が、曖昧な質問によって表面的な回答に留まるパターンです。
たとえば「過去の成功体験を教えてください」「あなたの強みは何ですか?」といった漠然とした質問では、候補者がどう答えるべきか迷い、特性や価値観まで引き出せません。
質問は具体性を持たせ、候補者が行動や状況を説明しやすいよう工夫しましょう。
他の面接手法も組み合わせる
STAR面接は、候補者のスキルを把握するのに優れていますが、それだけですべての情報を引き出すのは困難でしょう。
業務に必要なスキルや経験、企業文化への適合性を確認するために、他の面接手法を併用するのがおすすめです。
以下は、併用できる手法の例です。
適性検査 | 候補者の性格や仕事への向き不向きをデータで把握 |
---|---|
グループワーク | チームでの協調性やリーダーシップを観察 |
リファレンスチェック | 過去の職場での実績や評価を確認 |
集団面接 | 他の候補者との比較が可能 |
これらの手法を組み合わせると、より正確な採用判断が可能になります。採用要件や候補者の特性に応じて柔軟に取り入れてみてください。
STAR面接を取り入れる企業の代表例
STAR面接は、多くのグローバル企業で活用され、その代表例がAmazonです。
同社では、STAR面接が採用プロセスの重要な一環として位置付けられています。候補者が過去の経験から得たスキルが、企業文化にどの程度適合するかを見極めるために使用されてきました。
特に、候補者が過去に請け負った任務でどう意思決定したかにフォーカスしています。
こうした点から、この手法は「優れた人材を発掘し、最大限活躍してもらう」という採用方針を支える重要なプロセスとして機能していると理解できます。
他の企業においても、こうした体系的な面接方法を導入すると、採用の質向上につながるでしょう。
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まとめ:STAR面接で求職者とのミスマッチを回避しよう
STAR面接は、候補者の特性や能力を具体的に評価する効果的な手法です。
適切な質問設計と、圧迫感を与えない配慮ある進行を心がけると、候補者の本音を引き出しやすくなるでしょう。
また、他の面接手法を併用すれば、採用ミスマッチを防ぐ効果が高まります。STAR面接を活用し、自社に適した人材を確保する採用活動を実現しましょう。