企業が自ら運営するメディアを活用した採用方法のオウンドメディアリクルーティング。コストを抑えられる採用方法として、多くの企業が取り入れています。
本記事では、オウンドメディアリクルーティングの特徴や実施する際に必要な要素、始めるための手順について紹介します。具体的なコンテンツ事例も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の内容
オウンドメディアリクルーティングとは
オウンドメディアリクルーティングについて、以下の通り解説します。
- オウンドメディアリクルーティングの特徴
- 求人サイトとの違い
- 人材紹介との違い
- ダイレクトリクルーティングとの違い
それぞれ解説します。
オウンドメディアリクルーティングの特徴
オウンドメディアリクルーティングは、企業が自ら運営するWebサイトやブログ、ソーシャルメディアなどのプラットフォームを活用して行う採用活動です。企業が直接コントロールできるメディアを通じて、自社の魅力や企業文化、求人情報を伝えられます。
オウンドメディアリクルーティングにより、企業は自社のストーリーやビジョンを詳細に展開し、ブランドに共感する候補者を引き寄せられます。コンテンツを通じて候補者とのエンゲージメントを高め、長期的な関係構築を図れるのも特徴の1つです。
求人サイトとの違い
オウンドメディアリクルーティングと求人サイトの主な違いは、コントロールとブランディングの度合いにあります。オウンドメディアリクルーティングでは、企業が自身のWebサイトやソーシャルメディアなどを通じて直接情報をコントロールし、自社の魅力を詳細に伝えられます。
一方、求人サイトは複数の企業が利用するプラットフォームであり、フォーマットが限定されるため、企業独自のブランドを際立たせられません。オウンドメディアを用いることで、候補者とのより深いエンゲージメントとブランドへの共感を得やすくなるでしょう。
人材紹介との違い
オウンドメディアリクルーティングと人材紹介の違いは、主に候補者へのアプローチ方法とコスト構造にあります。オウンドメディアリクルーティングでは、企業が自らのWebサイトやソーシャルメディアを利用して、直接候補者とコミュニケーションを取ります。
一方人材紹介では、専門のエージェントが候補者を探して選定し、企業に紹介するサービスを提供します。高い専門性と広いネットワークを活用できるものの、成功報酬として高額なコストが発生することが一般的です。
ダイレクトリクルーティングとの違い
オウンドメディアリクルーティングとダイレクトリクルーティングは、どちらも企業が直接候補者にアプローチする点では共通していますが、その手法に違いがあります。オウンドメディアリクルーティングは、企業が自ら運営するWebサイトやソーシャルメディアを通じて情報発信し、候補者を引き寄せる手法です。
一方、ダイレクトリクルーティングは、企業が積極的に特定の候補者をリサーチして直接コンタクトを取る手法です。このアプローチでは、特定のスキルや経験を持つ候補者に対して、直接的なオファーが行われます。
オウンドメディアリクルーティングが注目される背景
オウンドメディアリクルーティングが注目される背景には、デジタル技術の進化と消費者および求職者の情報収集行動の変化があります。インターネットとソーシャルメディアの普及により、企業は自社のWebサイトやソーシャルメディアチャンネルを通じて、直接多くの人々にリーチできるようになりました。
この手法の活用で、企業は採用情報だけでなく、企業文化やミッション、仕事の魅力を詳細に伝えて候補者との信頼関係を構築できます。
また、採用プロセスにおいて自社ブランドの認知度を高めると同時に、コスト削減も期待できるため、特にコストパフォーマンスを重視する企業にとって有効な手段とされています。
オウンドメディアリクルーティングのメリット・デメリット
オウンドメディアリクルーティングのメリット・デメリットについて、解説します。
オウンドメディアリクルーティングのメリット
オウンドメディアリクルーティングのメリットは多岐にわたります。
- 企業情報を詳しく伝えられる
- 採用コストを削減できる
- ブランドイメージを構築できる
まず、企業は自社のWebサイトやソーシャルメディアを通じて、直接的かつ個別に採用情報や企業文化、仕事内容を詳しく伝えられます。企業の真の魅力や価値観を伝えることが可能となり、候補者との強い関係を築く基盤を作れるでしょう。
また、自社のメディアを使用することで、採用に関わるコストを大幅に削減できる点も大きな利点です。求人広告や人材紹介会社に依存せずに自社リソースを活用することで、経済的な負担を軽減します。
さらに、オウンドメディアリクルーティングは、候補者に対して直接的なコミュニケーションを取れるため、よりパーソナライズされたエンゲージメントが可能です。候補者が自社に対して持つ印象を正確に管理し、ポジティブなブランドイメージを構築できます。
オウンドメディアリクルーティングのデメリット
オウンドメディアリクルーティングにもデメリットはあります。
- コンテンツ制作に時間とコストがかかる
- 効果が出るまでに時間がかかる
- アプローチ範囲が限定される可能性がある
有効なオウンドメディアを運用するには、高い品質のコンテンツを継続的に提供する必要があります。
しかし、高品質なコンテンツの作成には、専門的な知識とリソースが欠かせません。コラム記事や動画、インタビュー記事などの制作は、時間とコストを多く要する作業です。
また、オウンドメディアの構築と運用には時間がかかります。効果を見るまでに長期間を要する場合があり、すぐに結果を求める場合には不向きです。ターゲットとする候補者にリーチするためには、適切なマーケティング戦略とSEO(検索エンジン最適化)が不可欠であり、これらのスキルが不足していると効果的なリクルーティングが難しくなります。
また、自社のメディアだけに依存すると、リーチの範囲が限定されがちです。特定の業界やスキルセットを持つ候補者に対して、より広範囲からのアプローチが必要な場合、オウンドメディアだけでは十分な効果を得られない可能性があります。
オウンドメディアリクルーティングに必要な要素
オウンドメディアリクルーティングに必要な要素は、以下の通りです。
- 求人票の記載
- 求人サイト
- 独自コンテンツ
それぞれ詳しく解説します。
求人票の記載
オウンドメディアリクルーティングでの求人票の記載は、候補者に対してポジションの具体的な情報を提供する重要な要素です。
記載する必要がある基本情報は、以下のようにさまざま挙げられます。
- 職種や職務内容
- 必要とされるスキル・資格
- 勤務地
- 給与の詳細
- 応募資格
- 勤務時間
- 雇用形態
求人票の情報は、候補者が求人に対して正確な理解を持ち、自身との適合性を判断するために重要です。求人票には企業の文化や価値観を反映させることも重要であり、求職者に対して企業の魅力を伝え、興味を引く要素を加えることが求められます。
求人サイト
オウンドメディアリクルーティングにおける求人サイトは、自社の求人情報を集約し、外部からのアクセスを容易にするためのプラットフォームです。使いやすさやアクセスの良さ、情報の見つけやすさを重視して設計する必要があります。
SEO最適化を施し、検索エンジンでの上位表示を目指すことで、より多くの潜在的な候補者にリーチできるでしょう。サイト内では、求人情報だけでなく、企業の文化やイベント、社員の声など、会社を総合的に紹介するコンテンツを提供して、訪問者の関心を引きつけることが重要です。
独自コンテンツ
オウンドメディアリクルーティングの成功には、独自性のあるコンテンツの提供が欠かせません。コンテンツは、企業のブランドイメージを形成し、候補者との関係を築くために重要といえます。
具体的には、社員インタビューや職場環境の紹介、日常の業務の様子、社内イベントのレポート、キャリアアップの機会など、多様な情報を含ませましょう。独自コンテンツは、候補者に対して企業の独特な魅力を伝えるためのものであり、企業の価値提案を明確に示せます。
オウンドメディアリクルーティングを始めるための手順
オウンドメディアリクルーティングを始めるための手順は、以下の3ステップです。
- 採用するポジションに必要な職務とスキルを洗い出す
- 採用したいターゲットの人物像を明確にする
- 自社の魅力や強みを整理する
それぞれの手順について解説します。
採用するポジションに必要な職務とスキルを洗い出す
オウンドメディアリクルーティングを開始する前に、採用する特定のポジションで求められる職務内容と必要なスキルを詳細に分析しましょう。
現在その職務を担当している従業員や部門マネージャーとの面談を通じて、以下のように求められる業務やスキルなどを明確にしてください。
- 職務の日常的なタスク
- 求められる専門知識
- 技術
- その他で必要な能力や資質
必要な職務とスキルに関する情報は、コンテンツの作成や、候補者に求める期待を具体的に伝える基盤となります。また、職務とスキルを明確にすることで、不適切な応募を避け、適切な候補者を引き付けることにもつながります。
採用したいターゲットの人物像を明確にする
理想的な候補者となる人物像の具体的な設定は、オウンドメディアリクルーティングにおいて非常に重要です。この人物像は、求める職務スキルだけでなく、企業文化に合致する性格や価値観も考慮して作成されます。
明確にしたい項目
- 名前
- 年齢
- 居住
- 学歴
- 結婚
- 子供
- 部署
- 1日のスケジュール
- 経歴
- 活躍できている要因
例えば、チームワークを重視する企業であれば、協調性やコミュニケーション能力を重視した人物像が必要です。設定した人物像をもとに、ターゲットとする候補者に最適なメッセージや情報をカスタマイズし、コンテンツを通じて効果的に訴求できます。
自社の魅力や強みを整理する
企業が持つ独自の魅力や強みの整理は、候補者の興味を引きつけ、選ばれる理由となります。
具体的には、以下のように企業が提供する価値を整理しておきましょう。
- 企業のビジョンや文化
- 働く環境
- キャリア成長の機会
- 福利厚生など
自社のWebサイトやソーシャルメディアを通じて伝えたい情報を展開することで、ブランド認知度の向上、タレント獲得につながります。
オウンドメディアリクルーティングの運用手順
オウンドメディアリクルーティングの運用手順は、以下の3ステップです。
- オウンドメディアを制作する
- 有益なコンテンツを作成する
- 定期的にリライトする
一つひとつの手順について解説します。
オウンドメディアを制作する
オウンドメディアを制作する際は、ブランドの独自性と一貫性を保ちながら、訪問者にとって魅力的で使いやすいメディアを提供することが重要です。Webサイトやブログ、SNSの設計にあたっては、ユーザーインターフェース(UI)とユーザーエクスペリエンス(UX)の両方に配慮しましょう。
また、SEO(検索エンジン最適化)を意識した構造にすることで、検索エンジンでの可視性を高め、より多くの候補者にリーチできます。技術的な側面とコンテンツの質が直接、訪問者の第一印象とエンゲージメントに影響するため、専門的な知識を持つ人と協力することが求められます。
有益なコンテンツを作成する
オウンドメディアの価値を最大化するためには、対象とする候補者にとって有益かつ魅力的なコンテンツの提供が欠かせません。採用情報に限らず、業界のトレンドやキャリアアドバイス、社内イベントの報告、従業員のインタビューなど、多岐にわたる情報を網羅しましょう。
コンテンツは、求職者の教育や知見の共有と同時に、エンターテイメント性を持つものが望ましいです。また、写真やビデオなどのビジュアル要素も活用することで、テキストベースの情報とは異なる角度から企業文化を伝え、より深い印象を与えられます。
定期的にリライトする
オウンドメディアのコンテンツは、時代に合わせて定期的に更新する必要があります。技術進化や業界の変化に応じて情報を最新のものに保ちましょう。
SEOの観点からも、定期的なリライトは重要です。過去のコンテンツのパフォーマンスを分析し、特に人気のあったトピックや形式を再利用すると効果的でしょう。
また、ユーザーからのフィードバックを取り入れ、それに応じたコンテンツ改善を行うことで、エンゲージメントの向上も期待できます。
オウンドメディアのコンテンツ事例
オウンドメディアのコンテンツ事例は、以下の通りです。
- 社員へのインタビュー
- プロダクトやサービスの種類と特徴
- 自社ならではの価値感が伝わるコンテンツ
- 給与や福利厚生など待遇面の紹介
- 勉強会や研修制度の紹介
オウンドメディアリクルーティングを行う際の参考にしてください。
社員へのインタビュー
社員へのインタビューは、企業文化や職場の雰囲気をリアルな形で伝えるための効果的な手段です。インタビューでは、異なる部署や役職の社員を選び、彼らの日常業務、キャリアパス、企業での経験、仕事のやりがいや挑戦について語ってもらいます。
出典:キャリアの限界に抗いたい人へ──上場したての“伴走型”経営管理でできること | NYLE ARROWS
ナイル株式会社の採用オンドメディアである「NYLE ARROWS」では、さまざまなメンバーの仕事に対する向き合い方や考えを垣間見えます。
メンバーの考えの触れることで、求職者からの憧れや働くイメージにもつながるでしょう。
インタビューコンテンツは、候補者が自社について具体的かつ個人的な視点から情報を得ることを可能にします。企業選びの際の判断材料として非常に価値が高く、企業の透明性や信頼感を構築する助けとなります。
プロダクトやサービスの種類と特徴
自社のプロダクトやサービスを詳細に紹介するコンテンツは、企業の事業内容を深く理解してもらうための重要な情報源です。各プロダクトやサービスの開発背景、市場での位置づけ、顧客からのフィードバック、未来の展望などを取り上げることで、企業がどのような価値を提供しているのかを明確に伝えられます。
出典:『メルカリ ハロ』の成長を加速させる最重要タッチポイント、「はたらくタブ」はこうしてつくられた | mercan (メルカン)
メルカリのサービスである「メルカリ ハロ」について深掘りしたコンテンツで、求職者の興味関心を惹きつけます。サービス理解にもつながるでしょう。
プロダクトやサービスの情報は、候補者が自社のビジョンや目標に共感し、情熱を持って働けるかどうかを判断する基準となります。なるべく正確な情報を記載するようにしてください。
自社ならではの価値感が伝わるコンテンツ
企業のミッションやビジョン、核となる価値観を表現するコンテンツは、候補者に自社のアイデンティティを深く理解してもらうために効果的です。持続可能性への取り組み、地域社会への貢献活動、社内での多様性と包摂性の推進など、企業が重視する価値観を具体的な例やストーリーを交えて紹介しましょう。
DeNAの採用オンドメディアである「フルスイング」。メディア名から常に全力投球している様がイメージできるのではないでしょうか。
企業の価値観に共感した候補者は、長期的な貢献度合いが高くなる傾向にあります。他の従業員を持ちベートしたり、仕事へのエンゲージメントを高めたりすることも期待できるので、自社の価値観が伝わるコンテンツは丁寧に作成すると良いでしょう。
給与や福利厚生など待遇面の紹介
給与体系や福利厚生、その他の待遇を詳細に説明するコンテンツは、候補者が具体的な働くメリットを理解するために不可欠です。具体的な給与レンジや健康保険、退職金制度、有給休暇、柔軟な勤務条件など、候補者が気になる情報を包括的に提供しましょう。
出典:福利厚生・休日休暇 | 働く環境と制度を知る | インパクトフィールドの採用情報
インパクトフィールドのように、福利厚生をはじめとする待遇面の詳細な記載は、求職者の安心につながります。応募の決め手にもなるでしょう。
待遇面の紹介コンテンツは、他社との比較検討材料になり、自社への魅力を高めることにつながります。入社後のミスマッチを防止するためにも、なるべく詳細に記載することが重要です。
勉強会や研修制度の紹介
自社の人材育成に関する取り組みを紹介することで、キャリア成長を重視する候補者の注目を集められます。定期的に勉強会や研修を開催している場合は、オウンドメディア内で紹介しましょう。
出典:教育研修制度|制度と環境|森永製菓 Recruiting Website
求職者にとって、「学びがない」「成長できない」と感じられる企業は選ばれません。森永製菓のように、どのような教育制度があるのか記載があると、入社後のイメージが持てます。
成長意欲が高い候補者を集められると、企業の長期的な成長が期待できます。事業拡大を目指す企業にとっては、特に重要なコンテンツになるでしょう。
まとめ:オウンドメディアリクルーティングでコストを抑えて採用活動しよう
オウンドメディアリクルーティングは、企業が自ら運営するメディアを通して採用活動を進める方法です。他社に依存しない採用方法であるため、コストを抑えられるのが特徴です。
オウンドメディアリクルーティングを成功させるには、ターゲットの明確化やサイト設計はもちろんのこと、有益なコンテンツ作成が重要になります。理想の候補者の興味をひくコンテンツを作成して、採用活動を効率的に進めましょう。